眩暈の追求

ochanoma_のブログ

えちえちDELETE TOUR 2021.06.02

音楽ナタリーに、2021年6月2日に開催された「大森靖子えちえちDELETE TOUR」のZepp Tokyo公演についてのライブレポートがあがったので、思い出しながら自分の感想を書きたいと思います。運動会や遠足の後に書く作文のようなものです。
セトリなどナタリーの記事を参考にしながら書きたいと思います
 
・・・本当は直後にガーっと書きたかったんですが、何となく途中で休んだらそこから一か月空いてしまって、「ノスタルジックJ-POP」の記憶がなくなってしまいました。だからそこだけ書くことができず悲しいです・・・それでもよいかただけお読みください・・・
 
17時過ぎ、りんかい線東京テレポート駅に降り立った時から、もう「大森靖子のライブに行くんだろうな」という人達が多かった。黒ずくめの女の子とか、地雷系ぽいピンクのファッションの子がいてドキドキした。カップルもいたと思う。その日の大森靖子の衣装みたいな白い服を着た女の子もいた。
エスカレーターを上ってだだっ広いお台場を見渡すとやっぱりZeppにむかうそれらしき人達が点在していた。ピンク髪の女子とか……お台場ってこんな人少なかったっけ?とややさびしい気持ちになった。
Zeppにはいつもでっかい車の展示場みたいな建物の中を通って行くのだが、そこが休業していて単に通り道でしか使われていなかった。これは人もいないわけだ!展示場は警備員が立っている以外は薄暗くて、しんとしていた。
お台場は、90年代以降は~2000年代前半に描かれた「未来」が朽ちかけながらも古びていないふりをして存在しているから行くたびに胸がわくわくするのだが、それがそのままひとけなくなっているのはさらに胸が高鳴る。子どもの頃は、お台場によく連れてきてもらっていて、活気ある姿を見ているからなおさら高揚した。このまま廃墟になったところが見たいような、見たくないような……
展示場の中ではいかにもオタクらしい男性たちや、ロックフェス(ロッキンとかビバラとかじゃなくて、フジロックみたいな?)に通っていそうな女性たちを見かけた。若くて病んでてピンクと黒で、っていう人ばっかりになっていたらどうしよう、と行く前は少し怖くて、実際そういう人はたくさんいたけど、それ以外の人が浮くような場所ではなかった。
ちなみに自分の服装はこれでした
 

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Zeppに入るとドリンクコイン交換してなっちゃんオレンジ貰いました。ドリンクコイン交換のところに「黙飲」って書いてありました、初めて見た熟語。
座席は1階の下手側後方、PA卓の真横って感じでした。席は一席開けではありませんでしたが、私のとなりだけ誰も座りませんでした……ソーシャルディスタンス
開演まではずっと道重さゆみソロ曲がでかめの音でかかってました。大久保薫を感じる音だと思った(あまり知らないけど、後で調べたら編曲:大久保薫が多い)
 
お笑いライブに行くことが多いんですが、コロナ禍で音楽のライブにも何回か行って、そうすると音楽ライブの方が開演前にしゃべったり盛り上がってる人多いな~と思います。単純に規模が違いすぎるからだろうけど。逆にZeppとかの方が施設が大きいから換気とかできてるのかもしれない…
開演前はTwitter見たり舞台の写真をとったりして過ごしました。
 
19時、開演の時刻が来ると出囃子的なものもなくしずしずと大森靖子が舞台に現れた。あわてて携帯を機内モードにしてしまいこむ。あんまり開演前と空気が切り替わった感じもしないまま、大森靖子が舞台に立つ。白いドレスがかわいくて、えっマーメイド…?となった。
そこからシンセサイザーを使いながら、「NIGHT ON THE PLANET」が始まりました。うわーーーーーーーーーーーーっ
ぎゃーーーーーせいこちゃーーーーーーーーーー
神々しい!正直、最新作「Kintsugi」はしょっちゅう聴いてはいるものの、歌詞に向き合ってかみ砕く作業をあまりしてこなかったので、この曲は特にあんまり意味をうけとらないまま聴いていて、それでもこのなんともいえない静謐な音楽体験に涙が出そうになった。というか前半はどの曲でも泣こうと思えば爆泣きできたけどこらえてじっとみてました。
というかコロナ禍になってライブが中止になるなどで気軽にいけなくなって感じるようになったけど、生で音楽を聴く体験は気持ちがいい……音楽に詳しいとか、一つ一つの楽器に詳しいとかは全くもってないんだけど、楽器の演奏を浴びるのが楽しいと感じるようになった。クラシックとかも今行ったら楽しいかもしれない、小学生の頃は寝ちゃってたけど
 
2曲目は「夕方ミラージュ」でこの曲は本当に好きです。私は夫や子供の帰りを待つ主婦だったことは一度もないのに、夕方4:44に何もできなくてそれでもやらなきゃいけないことが山積みになっている主婦の気持ちが蘇る。この曲は特にいろんな人に届いてほしいと思います。いろんな人にこの気だるさを味わってほしい。「いい天気私には関係ないけどね」という歌い出しから最高。
そこから流れるように「えちえちDELETE」へ。アルバムの1曲目と2曲目の流れがとてもいいのでそのまま聴けて良かったです。これも「ねえ いつものあれ しないの?」と直接的じゃないのにえちえちですごい歌い出しの歌詞。最高の曲だ!!!!この曲をピエール中野のそばで歌うのなんか観てる側が妙な背徳感を覚えてしまいます。大森さんの歌いながらの動きも縦横無尽って感じでした。この間ずっと「かなり泣きそう」な状態です。理由はわかりません。
あとなかなか客席がスタンダップしないのでもどかしさもありました。別のバンドだと始まった瞬間立つライブもあったのですが、大森さんも特にそういう指示とか出さないのでみんな座ってた。立ちたかったし、立ちたそうにしてる人もちらほらいたけど。
そこに来ての「ミッドナイト清純異性交遊」で私の周り(PA卓横下手側)はワッと立ち上がった。ピンクのサイリウムを持っている人が結構いて、私は持っていなかったのでちょっと手持ち無沙汰な感じだった。3分の2は持ってたんじゃないでしょうか。(物販で買えばよかったのに)
ミッドナイトは結構泣いてしまいました。いい曲すぎるので
この時点でパンパパンヒュー!ってやつを結構やった気がしました。
続く「みっくしゅじゅーちゅ」も思い入れある曲で切ない曲なので泣きました。「買ったけど着たことないビキニがあるからお風呂はいろ 追い炊きでしばらくアツアツのままでいよう」という歌詞はずるい。追い炊きでしばらく、の永遠じゃなさを自覚しているところで苦しくなる。その次に「生kill the time 4 you、、♥」はうれしかった!!! TOKYO BLACK HOLEが好きなのでそこからやってくれると本当に嬉しいです。バンドでのアレンジが斬新で、こうなるのか!と驚いた。
とにかくせいこちゃんはよく動きよく踊っていました。歌いながらドレスをたくし上げて脚を見せたり低い姿勢になったりめまぐるしく動いていて、これがZOCか……。
「ANTI SOCIAL PRINCESS」は「1秒先で待っている」って言うだけあってスピード感があって最近の靖子ちゃんですって感じがある。はっちゃけててアニメの主題歌っぽくて聴いてて楽しいし盛り上がる。「2人が最高潮なら 世の中は説得すりゃいい」という歌詞が好き。等身大の歌というより1秒先から聴き手に語り掛けている感じが最近の靖子ちゃんぽさを受け取るのかもしれない。
靖子ちゃんのアルバムの中ではtbhが一番聴いていて、逆にキチガイアは申し訳ないほど聴いていない(好み)ので、「アナログシンコペーション」はイントロドンできなかった!でも「あのステージへ続く光の道」…と歌詞を思い出しながら噛みしめて聴きました。演奏がいい、ピエールのドラムがいい
そんなに思い入れがない方ではあるものの聴くとカタルシス的なものがあるいい曲だと思いました。
 
「family name」からは大森とsugarbeansの2人体制へと移行。(ナタリーより)
family nameはZOCの曲で、わたしはZOCの活動はまじで追ってないのであんまり知らない曲もあるけどこの曲は好きです。大森さんの歌の世界を適切に伝えるには大森さんの歌声が一番ぴったりなのではないでしょうか。ていうかとにかく大森さんは歌がうまいと思った。高音がピッと出るから気持ちがいい。
「いらない感情しか売りはしないから 消費されたって消えはしない」という歌詞が、今のところ自分の他人を「消費する」という表現への答えのように思える。
ZOCは私にとっては大森さんの活動をより多くの人に届けられる手段のように思えるので、武道館は届いた、(配信見なかったけど)次はMステあたりまで届いてくれたらいいなあと、特にZOCに思い入れのない自分は思いました。メンバー入れ替わりまくって今じゃない感あるかもけど、MステってそういうところあるしがんばれZOC!
 
ここからはライブレポにも書いてないし、あまり書かない方がいいことなのかと思ったけど、心に残っているので書きます。記憶力がないのでおぼろげであいまいながら大森さんが自分の心情を吐露し、「大森靖子の曲は好きだけど人間性は嫌い」みたいな言葉をよしとしていないことがわかった。私はそういう人の気持ちもわかるなーと思っていたので思わずドキッとしてしまった。でも、確かにそれが自分の目に入ったら嫌な気持ちになるだろうな、という想像ができるようになったのも大森靖子さんのおかげなので……私は靖子ちゃんに育てられたと言っても過言ではないです。
曲をたくさん作ることで本当の自分を覆い隠して誰にも届かないようにしていた
そんな言葉の後でゆっくりと歌われる「呪いは水色」、大森靖子のことはたくさんの曲が護っているからこちらからとらえることはできないけど、これはその大森靖子に一番接近できる曲なのではないかと思った。
 
呪いは水色は弾き語りがメインのライブでもアカペラで歌っていたこともあって、言葉を一語一句漏らさずに届けたいという思いが強い曲なのかなと考えています。この曲を作ったばかりの頃のライブと変わらない歌声で歌ってくれた。変わらないのは嬉しい。でも逆に、呪いは水色という曲が呪いとなって大森靖子を縛っている可能性はないだろうかと思いました。
そのあとシュガビンさんのキーボードをバックに”聖地・トイレにて君を想う”と「劇的JOY!ビフォーアフター」が始まる。わーいTBH曲!まさかキーボード弾き語りで劇的JOYが聴けるとは……
 

 
ステージに靖子ちゃんひとりになって、弾き語りパート。
私が大森靖子を好きになったのはtbhのアルバムが出たときだから、というか初めて生で見た大森靖子tbhをやっていたから、最初のギターのひと鳴らしでTOKYO BLACK HOLEをやるのがわかる。毎回毎回大好きな曲。でも歌っていくうちに「わたしの名前もさらってくれるの」って少女3号?それから東京と今日、仕事がない日は行くとこない、今日3回目のシャワー溶けそう!って魔法が使えないなら、そしてまたTBHに帰ってくるような、ものすごいマッシュアップだった。一貫した東京というテーマ。めまぐるしい展開に飲み込まれながら、このライブを東京のお台場、作り物のきらめきに飾られた埋め立て地の真ん中で観ることができていることに胸打たれた。ここで観ることに意味があると感じた弾き語りだった。
 
「stolen worID」ではミラーボールがゆっくりと回り始めて、それがプラネタリウムみたいで本当にきれいだった。深層世界に入っていくような感じ。あんまりちゃんと聴いてこなかった曲だけど、せいこちゃんが生きていてくれてよかったなーと思ったのを覚えている。
ライブを観て思ったけど本当にこの人が生きていてくれてよかった。歌い続けてくれる方が絶対にいい。結婚して子供を産んで幸せになっちゃったねって、見切りをつけた人も多そうだけど、私は今回ライブを観て靖子ちゃんがピと結婚して子供も産んでこの世界にとどまる理由がたくさんあるということにすごく安心した。
そうじゃなかったら、フラっと絶望して全部やめてしまいそうに見えたから。ライブパフォーマンスとして心の暗い面や揺らいでいる面を増幅させてお客さんに見せているんだってことは理解しているはずだけど、やっぱり本当に不安定な人に見えてしまうから。
 
静かに「死神」が始まって、「川は海へとひろがる 人は死へと溢れる」で一気にバンドの轟音が流れ込む。大森靖子のバンド形態のライブはこの瞬間のためにあるなって思う。「マジックミラー」とか……
ピエール中野大森靖子が結婚しているという事実が自分にとってかなり大事なことであるというのも相まって、ドラムから楽器隊が入ってくるこの瞬間に毎回胸が熱くなる。
「死神」は出たときは壮大すぎてあまりピンとこなかったけど、すっかりなじんでいる。「川は海へ~」のところのメロディーが気持ちいい。大森靖子はメロディーメーカーなので。
それで、猛れ猛れ猛れ!心を殺すことはRude!のRude。この曲はすごいですね。今年のいい曲、とかじゃなくて、2020年代を代表するアンセムとなってほしい。大森さんにしては歌詞が極限まで削がれていて、きっといろんな人に伝わると思う。「自殺なんてないのさ 誰が君を殺した?」という歌詞に目が覚める。そのあとの「分かり合えない世界はスルー 嘘 どうしても変えたい」というのは2020年代ならではって感じがする。2010年代は対立を避けてスルースキルでやっていく時代だったけど、そうもいかなくなってきたのが2020年代って思うから。Rudeはすごい。
 
つぎつぎと音楽を浴びて脳内でいろいろな思いが巡るのを感じているうちに、BGMとしてのオリオン座が流れ始め、靖子ちゃんがそれに合わせて歌いながらさよならっぽいしぐさをしているのにもう終わりか…と驚いた。オリオン座を合唱するやつがどうしても苦手だったので、コロナ禍のライブでそれができなくてちょっとほっとしてしまった。なんかみんなが帰って行って、アンコールがあるのかないのか?と戸惑っているうちにもうみんなが出てきた記憶がある。
「S.O.S.F. 余命二年」はアルバムでかなり感動した曲。靖子ちゃん作曲じゃない曲が2曲続いた後に、「ダサい打算 トロイ未来 僕は僕は僕は僕は!」と歌い出しから高い音に上っていくメロディーがガツンときてあーこれ絶対せいこちゃんだなって思った。歌詞の読み込みはまだしていないから自分なりの解釈もまだだけど、この曲は突き抜けるようなメロディーが好き。バンドの演奏も!
靖子ちゃんのバンド(シンガイアズ?だっけ)は靖子ちゃん含めるとギターが3本いて、ベースもドラムもキーボードもシンセもいるしで音の量、厚みがすごい。そんな壮大な演奏での大きな曲が終わって、靖子ちゃんが「二宮!次の曲!」と絶叫すると二宮さんが「お茶碗!!!!!」と叫び返して、会場にちょっと笑いが起こる。忘れてたけどそういえばこのやり取りお約束だった。
そこからニコニコしながらギター一本でうたわれる「お茶碗」。
さっきまで6人のバンドと息をあわせて奔流のような演奏をしていたところから聴く靖子ちゃんひとりの「お茶碗」はちょっと、それこそ家の余りものでさっさとつくった夜食のお茶漬けみたいな雰囲気で。あれな言い方をするとなんか事後っぽくて、わたしはこのライブでいちばんえちえちだったのはこの「お茶碗」だったと思っている。
 
そんなこんなで締めくくりは「絶対彼女」。歌詞は道重さゆみと歌ったときのやつだったような気がする……私は元の方がいいと思う。あといつからか始まった腕の振り付けもなんか好きになれなくて、サイリウムも持ってない私は棒立ちでややノリながら聴いていました。それでも(たぶん)許されるから大森靖子のライブに行けている。
でもやっぱりサイリウムないと少し手持ち無沙汰だった。コールアンドレスポンスも全部心で返して、「あなたが、あなたがあなたがいる限り、あなたの美しさを歌う曲を作り続けることを誓います!」と宣言し(ナタリーより)、「えちえちDELITE TOUR」は閉幕した。
 
 
すごいあっという間だったけど、来てよかった……
のろのろと退場していくと、いかにも大森靖子好きそうなドレッシーな女子たちがきゅっとなっていた。ああなりたいなーなりたいのになれないなーなりたいだけではなれないんだなーと思う存在。順路に沿って進むといかにもZOCヲタクですっていう装備の中年の方々を見かけた。こうもなれないんだよな。変なダサい服を着て中学生みたいななりの大学生で、自分はいつも中途半端な存在だなって痛感する。
服とか好きになりたい、装うことに興味を持ちたい。どっちかっていったらドレッシーな女子寄りになっていきたいんだから。
せいこちゃんを観ているときは完全に魂だけの存在だったけど、夢から覚めたように自分の肉体が気になりだした。
 
りんかい線で来たからりんかい線で帰ろうと、帰路をゆく人々にそって歩いていたら、どこからか聞きなれた曲が聞こえてきた。大森靖子の「新宿」。周りの人々も多少その歌声を気にしている様子を見せていた。
きょろきょろしていると道の先で女の人が「新宿」を歌っていたようだった。
わたしはなんとなくそれを耳に入れたくなくてくるっと振り返り逆方向のゆりかもめの駅を目指した。
生活保護ではしからはしまでみつあみをした女と遊んで……」
せっかくせいこちゃんの歌声を聞いたのに知らない女の大森靖子聴きたくないよ。
今弾き語りしてるってことはライブに行ってないわけで、でもライブがあるのは知っててやってるってことで、その大森靖子ヘの執着がなんか気味悪くてぞっとした。
しかもその曲、今日やってないよ。大森靖子はあなたが思うより先を行っている。
早歩きで真っ暗な海のほうへ向かってゆりかもめの駅に入った。乗るつもりじゃなかったけどゆりかもめはすごく好きだから図らずも乗れて楽しかった!
それに、ライブ会場を出てそういうアクシデントがあるっていうのも配信じゃありえないことだし、生のライブならではのことだなあと感じた。小学生の頃、初めて歌手のコンサートに行って、帰り道に明らかに無許可のうちわとか写真を売ってた屋台を見かけたときと似た心のざわつきがあって懐かしかった。
 
 
 
大森靖子さんは確実に自分の一部をつくってくれた人で、というか単純に曲が好きで、でもあまりライブには行ってなくてワンマンは3年ぶり2回目くらいでノリとか客層とかに怯えていたけど行ったらとてもよかったので行ってよかった。
バンドセット人数多いから音楽浴びれるぜ!って感じで突っ立ってるだけでも気持ちがよく、生の音になかなか触れられない時期にその欲を満たしてくれました。夜のお台場のきらめきにもぴったりだったし!いつもありがとうございます。